2012-07-19

マイカレンダーというスパムアプリへの対処の仕方をインターネットの自由と責任に基いて考えてみる

マイカレンダーのリクエストを受け取ったときの正しい対処の仕方を考えてみました。インターネットの原理から考えて、選択肢は以下の3つで、いずれも正しい対処です。

  • A: 【便乗派タイプ】マイカレンダーを使って、リクエストはばらまかないで(すでにマイカレンダーを使用しているユーザーのみを対象に)使用する
  • B: 【委員長タイプ】マイカレンダーをブロックして、リクエストを送ってきた人に優しい一言をかける
  • C: 【一匹狼タイプ】マイカレンダーのリクエストは無視して(波状攻撃に耐える)、リクエストを送ってきた人には特に何のアクションも取らない


マイカレンダーは新しい形式のミスリーディングアプリに分類される限りなくブラックに近いグレーなアプリです(純粋なスパムだとすればここまで広がらなかったはず)…むろんアプリの使用はユーザーの自由なので使っていることを責めることはできませんし、ネットリテラシーが低いなどと悪態をつくこともありません。ユーザーが最小限の注意深さで安心してネットを楽しめる環境を用意することはプロダクトをサービスする側の役割だと思います。それは製造業についてPL法が製造者の過失を負わせるように。ただ、ソフトウェアについて難しいところはフリーで提供されている場合もあるということです。ここでのフリーとは「無料」というよりはむしろ「自由」と解釈したほうが筋が通ります。それがどういうことかと言えば、「自由には責任が伴う」ということです。自由に使用していい代わりに、己のケツは己で拭くことが求められているのです。実際に、多くのオープンソースライセンスのひな形ではauthorは免責されていることが多いです。Anonymousがクラッキングされた企業や政府の方が悪いと考えているのも「自分でケツ拭け」の原則の通りです。インターネットは、この「自由と責任」を最大化することによって発展してきました。「自由と責任」はインターネットの極めて強力な推進力です。しかしインターネットがこの原理に基いて発展する間に、数多くの主体を扱うこととなります。まず、子ども。子どもに「自由と責任」はあるでしょうか。インターネットならばこう考えます。「もちろんさ!」。だから9歳の子どもがOSSコミュニティで活躍することや、中学生が企業や政府にクラッキングをしかけることはクールだと考えられているのです。しかしどうでしょう。インターネットでない場合の人々は子どもに完全な「自由と責任」を与えていません。子どもは完全な主体となるまでは保護者の庇護下にあるものだからです。完全な主体とは自由の対価として責任を果たす能力がある人間のことです。ここに齟齬が生じます。子どもがインターネットを使ったとき、インターネットはフラットに子どもを主体として扱い、インターネットでない場合の社会は子どもが庇護下に置かれることを求めます。ソーシャルゲームの適正利用の主眼に未成年ユーザーの保護が据えられるのにも、このようなインターネットにおける主体の問題という原理的な背景があるのです。だから逆に言えば、サービスの提供側はこの原理的なほころびには気を配っておきたいところです。特に、会社としてサービスを運営していく場合です。例え主たる商品が(「フリー」な)インターネット上にあるとしても、会社の法人としての実態はインターネットでない場合の社会にも根ざしています。そこで「たかが未成年ユーザー」と片手間に考えると足元をすくわれかねません。インターネットと主体という、インターネットが原理的に抱える誤謬と向かい合っていることを忘れてはなりません。

さて、インターネットと主体という問題を未成年というケースに当てはめて考えてみましたが、スパムアプリに話を戻します。今回、マイカレンダーを使用して意図せずにFacebookのフレンドにリクエストをばらまいてしまったユーザーの気持ちになってみます。彼は主体として自由にマイカレンダーを使用したのだから責任は彼が取らなければならないのでしょうか(確かに彼は少なくとも「リクエストがうざい」と思われるという評価の下げ方によって責任を取っていますが)。ここではマイカレンダーが「このアプリで友人の誕生日を登録するとリクエストをばらまきます」ということを説明していないという点が争点になります。これはマイカレンダーが事前に十分な説明しないことによって彼を主体にする(責任が取れる状態にする)ことを怠っており、彼自身は主体たりえていません。ここで勘違いしていけないのは、マイカレンダーがリクエストをばらまく機能を持っていることが悪いのではなく、そのことを事前に説明しないままその機能を使わせたことが悪いということです。以上のことから、リクエストをばらまいてしまった彼は悪くなく、マイカレンダーもすべての機能が悪いわけではないということが分かります。ここで冒頭のA, B, Cの選択肢を振り返ってみると、そのすべてがリクエストをばらまいてしまった人のことを責めていないという点で正しく、またAの便乗派タイプについても、マイカレンダーの悪い機能を避けて使用しているという点で正しいといえます(ただ、「あっ、彼も使っているなら大丈夫だ」→そしてリクエスト爆発というマイカレンダーの悪い機能の広めることに一役買ってしまうことを避ける手段が現状ないため、及第点といった感もある)(また、Aは悪い機能を友人に悪い機能であるということを「説明」したうえでまだマイカレンダーを使用していないフレンドにリクエストを送るという手段もあります)。そしてCの一匹狼タイプについても伝統的で尊重されるべき選択肢です。「自由と責任」の"責任"はつまりresponsibility「応答可能性」ということであり、つまりは「可能ではあるがあえて選択しない」ということです。これも責任の取り方の豊かさに寄与する立派な責任の取り方です。

そして最後にBの委員長タイプについてです。彼女は不正を許さない正義漢です。ただ、周り(例えばCの一匹狼タイプ)への配慮が足りなくなりがちなこともあって玉に瑕といったところ。ただ、マイカレンダーの悪い機能の是正へ動き出すにはAが最も積極的な行動を選択しているといえます。インターネットはこのような闘争によって権利を守り続けてきた歴史があります。米国では政府がハッカーを逮捕して締め付けてきたこともあったし、WikiLeaksは世界を騒がし続けてもいる。米国のインターネットユーザー主導で前述のオープンソースライセンスが整備されてきたのも、そこに闘争があったからにほかなりません。「自由と責任」の権利を獲得した経緯を、そこには闘争があったことを、忘れないようにしたいものです。委員長タイプに幸多からんことを!

@ymkjp


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