■ はじめて国民審査について考えてみた
国民審査についてはじめて考えてみました。前回の2009年8月にもその機会があったのですが、実は棄権できるということも知らずに、そのまま投票箱に入れただけ。ということで今回が「はじめての国民審査」です。
どういうふうに考えたかというと、要するに「あなたたち一票の格差を軽視してるのが許せないから全員罷免。でも気に入った人は除外する」というオレオレルールに基づいて判断したのですが、まずその考えてみた結果から。
- × 山浦善樹
- 岡部喜代子
- × 須藤正彦
- × 横田尤孝
- × 大橋正春
- × 千葉勝美
- 寺田逸郎
- × 白木勇
- × 大谷剛彦
- × 小貫芳信
要約すると、Winny開発者を無罪とした裁判における裁判長であった岡部喜代子裁判官とURL掲載が公然陳列にあたるとした判決において反対意見を述べた寺田逸郎裁判官以外は全員罷免としました。
■ 国民審査とは
上記の考えに至った理由を述べることこそを述べるべきなのですが、まずはそもそも国民審査って何だったんだっけという話から。Wikipedia の定義が簡潔ですね。
最高裁判所裁判官国民審査(さいこうさいばんしょさいばんかんこくみんしんさ)は、日本における最高裁判所裁判官を罷免するかどうかを国民が審査する制度である
つまり国民審査とは、最高裁の裁判官を国民である僕たちが「罷免 OR NOT」(罷免するかしないか)で審査するということです。
■ 国民審査に意味はあるのか
国民審査の最大の争点は「一票の格差」の問題です。
この問題について、前回の2009年8月の国民審査では「一票の不平等」を容認していた2人の裁判官に77万票多く罷免の票が入りました。
この前回の結果が最高裁の裁判官たちに何の影響も与えていないとは考えにくいですね。現在までに国民審査によって罷免された裁判官はいないのですが、裁判官にとってもその不名誉な第1人目の裁判官として歴史に名を残すことはしたくないでしょうから。
■ ×印以外は書いてはいけない
そうか、意味がないわけではないようだな。よしでは審査してやろうということを思い立ったあなたが気をつけなければならない罠は「×印以外は書いてはいけない」ということ。僕たちがしていいのは罷免する裁判官に「×」という印を付けることのみ。それ以外のことをすると無効票になってしまいます。実際の投票用紙は下掲の札幌市のサンプル画像が分かりやすいでしょう。
■ 今回適用した基準はこの4つ
さて本題ですが、今回、国民審査の対象となる裁判官を僕が罷免するかどうか判断した根拠は下記の4つの条件になります。
- 「違憲状態で行われた選挙は無効」と意見しない裁判官は罷免(全員該当)
- 但し、支持できる意見を示した裁判官は罷免しない(2名該当)
- 但し、支持できない意見を示した裁判官は罷免する(1名該当)
- 但し、70歳以上は無条件に罷免(該当なし)
1. 「違憲状態で行われた選挙は無効」と意見しない裁判官は罷免(全員該当)
まず1つ目の条件ですが、現行の選挙制度が違憲状態にあると最高裁が判決していることは広く周知の事実だと思います。しかし、ある弁護士グループが国に選挙の差し止めなどを求めた訴訟で最高裁はそれを棄却しています。これを私は「違憲ではあるんだけど選挙が無効ってわけではない」という一票の格差問題の軽視であると判断しました。実務上の配慮ゆえの判決かもしれませんが、ただでさえ国民の意見が伝わりにくい構造となっているため、思い切った分かりやすい条件にしました。これについてはネットの論客である Chikirin さんも私と同じ意見を述べられてます。
このままでは政治家はいつまでも動きません。毎回違憲のまま選挙をし、自分が通ればそれでいいのです。選挙は(違憲であっても)有効だと最高裁がお墨付きを与えてくれるのですから。
2&3. 但し、支持できる意見を示した裁判官は罷免しない/支持できない意見を示した裁判官は罷免する(2名該当)
最高裁裁判官国民審査の参考資料(町村泰貴)を参考にしながら各裁判官の最高裁における判例から、個人的に支持できる裁判官については、 1. の条件に該当していても罷免しないことにしました。具体的には下記の2名が該当しました。
- 岡部喜代子 (63)
- 寺田逸郎 (64)
個別の判例内容についての支持不支持は私たちの意見も分かれるところでしょうが、一意見として支持した判例や意見を下掲しておきます。私の性向として、資本主義/インターネットの思想に親和性が高い意見を支持しています。
岡部喜代子 (63)
- 著作権法違反ほう助罪に問われたファイル交換ソフト「ウィニー」開発者を無罪とした決定で裁判長
- ライブドアの有価証券報告書虚偽記載事件において、損害算定方法について反対意見を述べた
寺田逸郎 (64)
- 児童ポルノ事件で、URL掲載を公然陳列にするという判決に反対意見を述べた大橋裁判官に同調した
なお、URL掲載を公然陳列にするという判決に大橋裁判官が反対意見を述べていますが、彼はウィニー作者幇助無罪判決について、幇助にあたるとの反対意見を述べています。これを私は不支持したため 3. の条件に該当しました。
4. 但し、70歳以上は無条件に罷免(該当なし)
今回、審査の対象となる10名の裁判官について70歳以上の者はいなかったため該当者はなしです。なぜ70歳かという一応の基準は普段自分が直に接している70歳以上の人間の判断能力や体力から連想しました。行政機関で70歳を境として基準としている制度に例えば警視庁の免許証の更新があります。
高齢者講習(70歳から74歳までの方の免許更新)
高齢者講習を受講しないと免許証の更新はできません。
最高裁と言えども実務は実務ですから、このように70歳以上の高齢者は罷免するという条件を設定しました。
■ まとめ: 私の国民審査(2012年版)
Winny開発者を無罪とした裁判における裁判長であった岡部喜代子裁判官とURL掲載が公然陳列にあたるとした判決において反対意見を述べた寺田逸郎裁判官以外は全員罷免としました。
大切な問題にもかかわらずなかなか改まって考える機会がない国民審査について考えることができて良かったです。結果的に比較的若い裁判官を罷免しないことになったのが興味深いです。それでは最後に改めて私の結論を下掲しておきます。
- × 山浦善樹
- 岡部喜代子
- × 須藤正彦
- × 横田尤孝
- × 大橋正春
- × 千葉勝美
- 寺田逸郎
- × 白木勇
- × 大谷剛彦
- × 小貫芳信