2013-02-19

都市計画に隠された4つの嘘

今回は都市計画でよく見られる4つの嘘を紹介するよ。意外と平気でこの嘘がまかり通ってるから、身の回りの再開発とかチェックしてみてね。



1. ゾーニングは嘘

住宅用地とか商業用地とか工業用地とか、いろいろあるよね。ああいうのはうまくいかない。住宅は住宅だけで固まってちゃいけないし、商業も固まってちゃいけない。渋谷も新宿も池袋も実はちょっと歩けばいつの間にか住宅街になってるよね。あれが理想形。日本の都市計画ってかなりうまくいってるほうらしいよ。

ゾーニングしないことを「混合一次用途」っていうんだけど、まあつまりは勝手に土地に目的つくらずに、地主とか借主が使いたいように使えるようにしないとうまくいかないよって話。

根本的な原因ってさ、たぶん頭ん中で理解できるようにしようとするからダメなんだよね。脳って抽象化しちゃうから、そういう街ってとんでもなくつまんない街になる。市役所の周りに文化施設集めて、とか、大学町にしちゃって、とか、スラム一掃して公園にしちゃって、とか。で、なんか知らんけどよくよく考えたら市役所の周りっていっつも閑散としてるよね、みたいな。そういう脳にやさしい街はやばいんだよね。この機能はここ、この機能はここ、みたいなとか、すっごいよくない。

日本で言うと東京駅周辺とか永田町とかあのへんだよね。あそこやばいよね。人がいるとこじゃねぇっていう気がむんむんしてるよね。座る場所ないし、みたいな。ああいう場所は中夜間人口の差が半端無くて、食堂とか娯楽とかもめっちゃ限られてるから、自然と企業とかに逃げられて衰退していくんだよね。

ニューヨークのウオール街とかがある島の南っかわとか、ダウンタウンは、もうそういうので困ってるらしいよ。従業員が働きにくいから企業が北上していって、顧客を追って金融機関も北上していくみたいなね。



2. 街路不要は嘘

短い街路とか、裏路地とか、とにかく角を曲がる機会はすっごい重要。

街路が細かい街を表す模擬図

頭ん中で考えるとさ、街路は無駄なんだよね。もっと効率よく土地を使わなきゃ! っていうふうになって、上の画像でいうとピンクの丸の部分をなくしちゃう。じゃあどうなると思う? めっちゃつまんない街になるんだよね。人の移動経路が1本しかなくなっちゃうんだよ。これが衰退の原因。

NYのセントラルパーク周辺の地図

実際、ニューヨーク市のマンハッタン島の真ん中にあるセントラルパークっていう有名な公園があって、この両脇に東と西で街があるのね。で、両方に高架鉄道があって、それは画像の水色のとこにそれぞれあったんだけど、それを両方ともなくしました。あれ、でも東は人気があって西は人気がないのはなぜだ? みたいなことになってるっていう謎があるらしいのね。

これがさ、見てみれば分かると思うんだけど、街路が多いのが東側なんだよね。西は、画像の下側のブロードウェイが斜めに走ってるあたり以外はさ、結構街区がおっきいよね。これが東が人気で西が人気がない原因じゃないかってこと。結構おもろいよね。



3. 建て替えは嘘

古い建物は街に必要なんだよね。別に全部古くないとダメってわけじゃないよ。混在が必要なの。っていうのは、古いと賃料安くて済むから、借主が幅広くなるんだよね。おいしいのに安めでランチが食べれる店とか、新築のビルにはありえないんだよね。これはもう純粋に経済の話だよ、うん。だから古い建物も新しい建物も、どっちも必要。

これも脳で考えてると導き出されない答えだよね。脳は、新しいか、古いか、二律背反で考えて、それぞれの理由を考えて、結果どっち、みたいな感じになりがちじゃない? はい、じゃあ一旦更地にしまーす、みたいな。それじゃダメなんだよね。

よくあるミスは公園ね。公園は都市計画のひな形のひとつだけど、単に作られた公園は浮浪者の溜まり場になるくらいが関の山。よっぽどうまい具合に立地しないと朝から夕方まで人がいるような公園にするのとかほぼ無理なんだよね。



4. 低密は嘘

田園都市イエーイみたいなの今でも結構信じてる人多いはず。でも都市って高密じゃないとダメなんだよね。建ぺい率とか容積率とか、厳しくしちゃだめ。土地の80%までしか建物建てちゃダメとか、建物の床の面積をあわせたのが土地の面積の何倍以上になったらダメとか、そういうのはしちゃダメ。防災とかそういう最低限のレベルクリアしたら、あとはなるように任せればいいんだよ。

で、高密がいきすぎて過密になることもあるかもしれないよね。でもさ、そんなのほっといたらいいんだよ。規制とかしようとしちゃダメ。だって普通に考えて、過密で困るのは住んでる人自身なんだから、不便で不快なら勝手にいなくなって調整されていくよね。それでいいんだよ。



ダメな例

で、これに気づいてビビったんだけど、これってさ、商店街がうまくいかない理由にあてはまってんだよね。よくある商店街って当たり前だけど商業ばっか集まってるし、長い直線になっちゃってるし。まあでも冷静になって見れば、商店街って商業地としてはうまくいってないけど住宅地としてはそれなりにうまくいってるんだよね。

勝手な計画があるからうまくいってないってことになってるだけだったりするのは結構あるんだよね。おめー、全然問題じゃないのに再開発とかしようとしてんじゃねぇ! ってなるのもしょうがないところもいっぱいあると思うよ。

で、4つの嘘を書いたけど、それを1つしかクリアしてないとかいうのは全然ダメなんだよね。ゾーニングしてない、街路が短い、古い建物と新しい建物が混ざってる、高密、この4つの条件がそろってないと人は集まんないんだよ。

あと典型的なダメになりやすい例はね、大区画。大区画ってもう脳で考えちゃってるの丸出しなんだけど、大区画って、大区画な時点で勝手にゾーニングに近い状態になっちゃってるし、全部新しい建物に建て替わっちゃってるんだよね。建った時点で二重苦。まあ内部に仮想的な街路はたくさんあるし、それなりに高密だし、ギリギリ勝負にはいけるんじゃないかなっていう感じかな。これを切り抜けるなら住居を上の階にくっつけるとかそういうことになりそうだよね。

で、問題児が合体したのが大区画の公園ね。これはもう「大区画の公園(笑)」に一発で認定しちゃっていいくらいのレベル。

で、そうなってくるとさ、もうね、「スマートシティ」とか正気じゃないよね。「おれ、スマートだからスマートなシティ計画できちゃうんだぜ〜? お前ら来いよ〜!」みたいな。

でね、面白い案件があってさ。さて、新宿歌舞伎町はエンターテイメントシティとか言って劇場ぶっつぶしてシネコンとビジネスホテル建てるらしいんだけど、こりゃどうなんでしょうね、っていう。大区画のような気がするので最初から結構なマイナス点ですが、結果はいかに。



東京

でもさ、アメリカの都市に比べたら日本はかなりうまいこといってるほうらしいよ。アメリカなら東海岸でも西海岸でもおっきな公園とか小学生くらいの子どもギャングがライフル持ちだして死んじゃうとかあるらしいから。それ考えるとマシだよね。

日本の都市って、特に東京とかさ、なんでうまくいってんだろうね。異常に電車社会で、土地が狭いから高密になりやすくて発展しやすかったとか、何個か思い当たる節はあるんだけどね。

住んでよかった街ランキングとかの上位の街とか、ゾーニングしてない、街路が短い、古い建物と新しい建物が混ざってる、高密っていう4つの条件見事に満たしてるからね。

他にも六本木ヒルズとかまともに「職住近接」って掲げて成功してるからね。こっちは明らかにたまたまじゃない。職住近接とかそのまんま「混合一次用途」じゃん、みたいなね。まあヒルズの場合は森さんががんばったっていうのもあるのかな。ものすごい執念で広い土地確保して、役所とも折衝して、成し遂げたんだよね。普通にすごい。

なんで東京がうまくいってるかはよく分かんないけど、ひとつこれは確実に言えると思うことがあってさ、都市ってそもそも定義するとしたら、「人が集まってる場所」だと思うんだよね。で、少なくともこれがうまくいってるから東京は栄えてるんだと思う。当たり前だけどね。

おしまい。


アメリカ大都市の死と生


まとめ

今回の話は全面的に「都市論のバイブル」である『アメリカ大都市の死と生』の第7章から12章を参考にしてる。

著者のジェイコブズさんはすごい人。彼女、研究者とかじゃないジャーナリストなんだよね。で、今回みたいな指摘しちゃうわけ。やっぱ門外漢って視点が違うから素晴らしい成果残せるんだろうね。

引用しておきます。

都市の街路や地区にすさまじい多様性を生み出すには、以下の四つの条件が欠かせません。すなわち、

  1. その地区や、その内部のできるだけ多くの部分が、二つ以上の主要機能を果たさなくてはなりません。こうした機能は、別々の時間帯に外に出る人々や、ちがう理由でその場所にいて、しかも多くの施設を一緒に使う人々が確実に存在するよう保証してくれるものでなくてさなりません。
  2. 街区は短くなくてはいけない。街路や、角を曲がる機会が頻繁でなくてはいけない。
  3. 地区は、古さや条件が異なる各種の建物を混在させなくてはなりません。そこには古い建物が相当数あって、それが生み出す経済収益が異なっているようでなくてはなりません。この混合は、規模がそこそこ似通ったもの同士でなくてはなりません。
  4. 十分な密度で人がいなくてはなりません。何の目的でその人たちがそこにいるのかは問いません。そこに住んでいるという理由でそこにいる人々の人口密度も含まれます。

ジェイン ジェイコブズ, 『アメリカ大都市の死と生』, pp. 173 - 174

今回は都市の話で、あとは地方の話もする必要があるかと思ってるので、同じ著者の地方に関する著書を参考にするために今読んでるとこ。



参考文献

※ジェイコブズさん、ジェーンとジェインで表記ゆれがあるから検索とかするときには注意してね。あと、なんとも惜しいことに彼女は2006年に亡くなっています。