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2013-10-23

エスカレータ片側開けるな問題は解決済み案件

エスカレータの片側のスペースを開けるべきではないというテーマは頻繁に話題になりますね。ネット界の風物詩です。


いわく、エスカレータでは元来歩くべきなのではないのだから、片側にスペースを開けるのは単位時間あたりの運搬人数を引き下げることになり非効率である、うんぬん。


しかしこのエスカレータの片側を開けないべき問題、実はヒト一人分の幅しか通ることのできないエスカレータを導入することで工学的に解決されている問題である。


例えば六本木ヒルズでは屋内にも屋外にもたくさんエスカレータはあるが、どれもヒト一人分の幅のものになっているので片側開けるなとかいう話にはならない。


分かってるところはとうの昔からこうやって解決済みで、つまり、人間のモラルなんぞに訴えかけるより、そもそも2列になることができるエスカレータを廃止して1列にしてしまえばよかった話だったのだ。


解決済みの問題であるとはいえ、前時代的なエスカレータは残っており、不毛な議論の火種となり続けていることは否定できない。


その現場を説得するため、改めて一人幅のエスカレータを導入する利点を考えてみよう。ともあれ、素人ながらに考えただけでもヒト一人分の幅のエスカレータを導入するメリットはかなり大きい。もはや、そもそもなぜに2人が並んで乗ることのできるエスカレータが発明され、普及に至ったのかがわからなくなってしまうほどである。


簡単に利点をあげてみよう。まず、一人分幅のエスカレータの白眉は、乗り手がしっかり自己責任をとれるようになっているという点である。


大切な前提として、基本的にエスカレータは歩くべきものではないとされているものの、製品の構造上人間が安全であると誤認する程度には歩くことはできてしまうわけで、歩けてしまうからには歩いた人が全て悪いと責めることはできないという点は押さえておこう。この問題がこじれている理由はこのエスカレータをめぐる善悪のあいまいさによるといっていい。


例えばエスカレータを歩きたい派の人がエスカレータを一人で歩く分には問題ない。周りの人に迷惑をかけないからである。これは2人分幅であろうと、一人幅であろうと同様である。


問題が起きるのは歩きたくない派の人と歩きたい派の人が混じり合った場合である (当たり前の話だが、ここが分かっていない人が多い。もし分かっていれば「じゃあ終電のときはどうなんだよ! みんな歩きたいじゃないか!」みたいな誤った発想は出てきようがない。なぜなら終電のときはみんなが歩きたい派になるから、問題は生じないからである)。


では歩きたい派と歩きたくない派が混じり合った場合でも、一人幅のエスカレータなら問題が生じないことを見てみよう。まず、先に歩きたくない派の遅井さんが乗っていて、後から歩きたい派の速井さんが乗ってきた場合は、遅井さんはエスカレータでは歩くべきではないという原則にもとづいて正々堂々とブロッカーになることができる。この正統性を前にして速井さんはぐうの音もでない。せいぜい上って追いつくまでの間の足音を大きめにしてプレッシャーをかけるくらいが関の山である。


逆に速井さんが前で遅井さんが後の場合はどうだろうか。これは簡単そうで、自己責任の取り方という点において奥が深いケースになる。まず速井さんは好き勝手に上っていく。遅井さんはというと、十分な車間距離をもうけて乗車することができるようになる。実はこの車間距離を取ることができるというのは一人幅の圧倒的利点であり、画期的な人類の進歩である。どういうことかというと、2人分幅の場合は、エスカレータを上っている途中で疲れて車間距離の間に割り込んでくる最も厄介なやからがいて、遅井さんの自衛手段が奪われてしまうことがあったのである。これは最も忌むべき事態で、善良なエスカレータユーザが良識に欠けるエスカレータユーザによって迷惑を被ってしまっていたのだ。


それに比べて、一人幅の場合は途中で割込みにあうこともなく、上から速井さんが転げ落ちてきた場合や、速井さんの乱暴な足取りによってエレベータが急停止した場合にも、遅井さんはしっかりとハンドレールを両手で握って身を固くすることにより、二次被害を受けることから自衛することができるようになっている。


これは何とも素晴らしいことであり、誠に寿ぐべき慶次であった。


ここに、私たちはエスカレータの環境工学上の欠陥がもたらす善悪の彼岸を乗り越えたのである。本当にややこしい問題だった。


おしまい。


追記 2013-10-31
気をつけて見てみると、六本木ヒルズも人が多く通る所 (オフィスエリアの Upper Lobby に行くところ、コンコースから蜘蛛エリアに上がるところ、など) は2列式のエスカレータでした。うーむ。


追記 2013-12-31
実家に帰って来て思い出したけれど関西はエスカレータの右側に列ができますな。世界中でも関西だけですぞw