旅行代理店:「航空券が届かない」苦情34件
毎日新聞 2014年07月20日 02時30分(最終更新 07月20日 09時02分)
◇資金繰りつかず、500人に影響か
旅行代理店「レックスロード」(東京都新宿区)に航空券を予約し、代金を振り込んだがチケットが届かないという相談が東京都消費生活総合センターに相次いでいることが19日わかった。今月2日から34件に上る。同社の社長(49)は毎日新聞の取材に、資金繰りがつかないため、500人弱の客にチケットを渡せない状況になっていることを明らかにした。
同センターによると、最初の相談は今月2日で、11日から急増した。海外旅行を計画して同社に100万円以上を支払った女性は、チケットが届かないため航空会社に連絡したところ、「予約は入っているが代金は支払われていない」と回答されたという。
レックスロードの社長は19日、毎日新聞の電話取材に「資金繰りがつかず、7月10日夜の出発分から発券できなくなった。年末までに(代金を支払った)500人弱の客が出発できない。申し訳ない気持ちでいっぱいで、おわびしなければならない。弁護士に相談して問題を解決するよう努力している」と話した。
同社は大手海外旅行情報サイト「エイビーロード」に広告を出していた。今年5月の求人広告によると、1987年に会社を設立、98年に都の旅行業免許を取得し、「ヨーロッパ旅行に特化しているのが強み」としている。
同センターは「まだ代金を支払っていない場合は振り込まず、航空券の手配を依頼した場合は航空会社に予約が入っているかどうかを早急に確認してほしい」と話している。【大迫麻記子】
まず社長と連絡がとれていることに驚きましたが、次に心配だったのは「資金繰りつかず、500人に影響か」と小見出しになっており事実関係が誤解されてしまうことです。
誤解が広がるのを防ぐため、私の知っている事実関係をメモしておきます。
だますことを前提にして無登録営業を行っていた可能性がある
冒頭の記事で社長はさも通常営業状態で資金繰りが悪くなったかのように話していますが、去年10月末時点で旅行業登録抹消、そして消センからの情報によると今年1月10日に事業廃止届けを出しており、供託金は引き上げ済みだったとみられるとのことです。
これは資金繰りの問題だけではなく、持ち逃げ用に詐欺を働いていたと疑われてもしかたがないのではないでしょうか。
むしろだますことを前提に無登録営業を行ったかどで詐欺を立証されるのを恐れたため通常通り営業を行っていたと主張しているのかもしれません。
当初は虚偽の説明で逃げ切ろうとしていた
実は現在は取り下げられていますが、レックスロードはホームページに嘘の弁護士事務所の連絡先を掲載していました。

この掲載分に対して「久保法律事務所」には下記のリリースが載っていました。
2014年7月14日
複数の方から株式会社レックスロードの業務停止についてお問い合わせをいただきました。調べましたところ,同社のホームページに同社が業務を停止した旨が記載され,「久保法律事務所」が同社に代わってお客様や関係者の皆様に個別にご連絡をさせていただく旨の記載がありました。しかし,当法律事務所及び所属弁護士は同社から連絡や依頼を受けたことはなく,同社を代理するものではございません。
それを受けてか、「久保法律事務所」うんぬんの掲載は下記に差し替えられています。
お詫び
お客様及び関係者の皆様
この度は急に業務を停止しご迷惑とご心配をお掛けし誠に申し訳ございません。
心より深くお詫び申し上げます。
現在、関係機関と連絡を取り合い事の収拾に向け鋭意努力しております。
詳細につきましては、7月18日以降随時個別にメール等でご連絡させていただきます
のでお待ちいただきますようお願い申し上げます。
なお、「7月18日以降随時個別にメール等でご連絡させていただきます」とありますが、7/20 (日) 現在私のところにはメールは届いていません。
被害総額は推定1億円
冒頭の毎日新聞の記事では被害は500人とあり、レックスロードが航空券単体が最低でも10万円ほどはするヨーロッパを対象にしていたことを考えると、被害総額は5千万円〜1億円近い金額になると推測されます。
ちなみに消センによるとレックスロードのりそな銀行の口座は現在凍結されているようです。これが1月の事業停止を受けてのことなのか、犯罪関連を察知してのことなのかは不明ですが、銀行側がえることのできたであろう情報から推測すると恐らく前者の理由だろうと考えられます。
航空会社への仮予約は行われていた
連絡がとれなくなっていることが分かった時点でチャイナエアラインへ連絡したところ私たちの名前で仮予約は行われていました。
これがレックスロードが被害の発覚を旅行業の供託金を回収する期限 (事業廃止から6か月) までに遅らせるために行ったものなのか、悪意のない無登録営業だったのかは分かりません。
リクルートのサイト運営のずさんさ
リクルートが運営する大手旅行斡旋サイト、エイビーロードの「カスタマーサポート宣言」には下記のように記されています。
旅行会社の信用調査
エイビーロードで掲載されている旅行会社は、その信頼度につき、専門の部署が当社所定の基準にもとづいて審査しています。
旅行会社が初めてエイビーロードへの掲載を希望する場合、当社はその会社の旅行業登録を確かめ、当社所定の資料を提出してもらうなどして、経営状態の確認に努めています。また、審査を経て、エイビーロードに掲載した後であっても、その旅行会社に関する重大な経営不安情報が入れば真偽を確認し、場合によってはその会社の情報掲載を停止することもあります。
エイビーロードに掲載されている旅行会社の情報は、当社による信用審査を経た会社のものだけであり、ユーザーの皆様が安心して旅行の申し込みができるよう、最大限の努力をしています。
リクルートの「専門の部署」が去年10月からの旅行業の登録抹消、あるいは今年1月の事業廃止を把握していればこれほどに被害は広がらなかったでしょう。
事業廃止が「旅行会社に関する重大な経営不安情報」でないとすると一体何が経営不安情報なのでしょうか。
被害にあった方は新宿警察署へ
消センからの情報によると都としては新宿警察署に対応を集約しているそうですのでそちらで被害届を出して下さい。
私は当初麻布警察署の刑事課へ行きましたが詐欺の確証がないとのことで水際作戦で被害届をださせてもらえませんでした。
なお、レックスロードの代表に返金督促の内容証明を送りたい場合など、登記簿を確認したい場合は消センに連絡してみてください。
今回の件で一番便りになったのは消センでした。
追記: 返金対応はあったものの航空券の補填はなし
私と友人6名はこの事件の被害者だったわけですが、リクルートより返金対応がありました。
この点に関しては、麻布警察署にも門前払いされ泣き寝入りを覚悟していた私としては嬉しい限りでした。しかし、もしこの詐欺がなかったとすれば私たちは航空券を手にできていたはずです。厚かましくもリクルートに航空券の補てんまで問い合わせてみましたが、その対応はされないとのことでした。
仮予約できていたはずのチャイナエアラインも私たちの名前はないとのことで、恐らく中間業者 (断定できないため社名は割愛します) によって売られてしまったのだろうと思っています。結果、私は夏休みの日程をリスケジュールして、フランクフルトへ旅行することにしました。友人たちは夏休みの調整が無理だったため、一緒にはいけなくなってしまい残念でした。
追記: 後日談、社長逮捕まで
(株)レックスロード(TSR企業コード:300323891、新宿区西新宿7-9-15、設立平成25年10月、資本金600万円、丸岡寿社長)は7月10日、貼り紙を掲示し事務所を閉鎖した
海外旅行の代理店「レックスロード(東京都・新宿区)に航空券の代金を振り込んだものの、チケットが届かないなどといったトラブルが相次いだ事件で、警視庁保安課は社長の男(49)を1日、旅行業務法違反(無登録営業)の疑いで逮捕しました
海外旅行の代理店「レックスロード(東京都・新宿区)に航空券の代金を振り込んだものの、チケットが届かないなどといったトラブルが相次いだ事件で、警視庁保安課は社長の男(49)を1日、旅行業務法違反(無登録営業)の疑いで逮捕しました。
時系列としては下記の通り:
- 2014-07-10 事務所閉鎖 (株)レックスロード : 東京商工リサーチ
- 2014-08-13 家宅捜索
- 2014-12-01 旅行業務法違反(無登録営業)の疑いで逮捕
- 2014-12-01 15:50~19:00 日本テレビ
- 2014-12-01 15:53~19:00 TBS
- 2014-12-07 00:15~00:45 テレビ朝日
なお、各テレビ報道は 価格.com - 「レックスロード」に関連する情報 を参考にしました。
この記事に関するご意見・ご質問は