インフレターゲットと円高是正には相関関係も因果関係もある。でも、別の話なのは別の話。
円安進んでいますね。それが「インフレターゲット論者の安倍総裁自民が衆院選で圧勝したことで」ってニュースでは解説されれていて、(良心はあるものの一般人でしかない)僕たちはその内容を 50% くらい理解しつつ、「長年の円高是正の悲願が叶いましたね」みたいなことを言って満足しちゃうと思うんです。インフレターゲットと円高是正は別の話なのにね。
経済学徒ではない僕たちはクルーグマンの名前が出てくる記事は読まなくていい Did you mean: Kenta YAMAMOTO
円さえ供給されれば良い
インフレターゲットがターゲットにしているのは「物価に対する円の価値」であって、「他の通貨に対する円の価値」ではない。
「物価上昇率目標」ですからね、そりゃそうでしょう。上記の一文で表題については「Q.E.D. 証明終了」なのですが、問題なのはおそらくみんなが要求してるのは前者じゃなくて後者なんだろうということなのです。「他の通貨に対する円の価値」を下げてくれ、つまり円安にしろって要求しているわけです。輸出産業が有利になるために。
しかし、物価も通貨も、円の供給を多くすれば達成されることなので結果オーライなのです(ここで行われるのは日銀による国債引受(買いオペ)なのですが、僕らが知らなければいけないのはせいぜいこの買いオペっていうのはゼロ金利で限界にきちゃってる公定歩合の引き下げとは違う方法なんだということくらいです)。
とにもかくにも、インフレターゲットでみんなが求めている円安は達成されるので結果オーライなのです。
「じゃあ安倍さん信頼出来るね☆」「んなわけねーだろ!」
そんな簡単な話でもないです。安倍総裁の場合はインタゲ論の裏に潜む財政政策(経済政策には金融政策と財政政策の2種類があって、インタゲは金融政策)が読めなくて、そこが問題なわけです。自民党の支持基盤である建設業界などはハコモノ行政、つまり公共投資でがんがん道路なりスタジアムなりをドカーンと作ってくれれば儲かるので嬉しがるわけです。でも、今の日本ってそんなことしてる段階でしたっけ? 「ハードからソフトへ」とかここ何年言われ続けてるんでしたっけ? (先の中央道笹子トンネル事故から分かるように高度経済成長期に作った高速道路やら橋やらの保守が必要になってきているの使うために建設国債を発行するならまだ分かるのですが、)ハコモノ行政をじゃんじゃかやられると困るのです。
とはいえ、「起爆剤」的な財政政策も必要だろうという意見もあって一概には言えない部分もあります。しかし、どうせ財政政策をするのであれば「効率的なバラマキ」かどうかは要チェックですね。
なぜ日銀はインフレターゲットを嫌がるのか
ここがよくわからない。なぜ日銀は買いオペを嫌がっているのか。仮説を2つ立てました。
- 「他の通貨に対する円の価値」を下げることはプライド的に許されない(人民元は他国から批判されていましたからね)
- 日銀法には日銀の目的は「物価の安定」と「金融システムの安定」と定められているが、インフレターゲットは「ターゲット(目標)」まで無条件に円の供給を続けるということなので(もしそれが担保されていないと市場が信用してくれない)、日銀が判断する裁量が減ってしまう。
直感的には1番(日銀にしてみれば日本円は "主力商品" だもんなぁ。そりゃ自社の商品の価値を下げるのは嫌だよね)だけど、実際は2番目な気がする。権限は離さないぞっていう抵抗。
結論: インタゲ大勝利
— もしかして: 山本健太 (@ymkjp) December 20, 2012